伊豆箱根鉄道5000系の製作①

ずっと神奈川県の鉄道を題材にNゲージを製作していますが、JRのネタも色々やってきたので今度は私鉄に手を出してみる事にしました。大手私鉄だと京王・小田急・東急・相鉄・京急と走っていますが、これらは割とネタにしやすいですし市販化されているものが多いので今後の楽しみに取っておく事にしました。で、その他県内の鉄道というと横浜市営地下鉄江ノ電伊豆箱根鉄道大雄山線箱根登山鉄道湘南モノレールシーサイドライン横浜高速鉄道等ありますが、江ノ電箱根登山鉄道は車両規格が特殊すぎて自作するにはかなりハードルが高く、市販製品もあるのでパス、横浜市営地下鉄も市販製品があるのでパス、横浜高速鉄道はほぼ東急・湘南モノレールシーサイドラインは鉄輪軌道じゃ無いので模型化は困難、となると残るは伊豆箱根鉄道大雄山線ですね。色々と検索してみても駿豆線の模型は市販品もある位なのですが大雄山線は市販化は既に生産完了しているガレージキットが1つ見つかっただけで自作を含めても模型化している方はかなり少ないようですので、チャレンジする価値はありそうです。

さて、現役の車両という事で早速小田原に調査に行ってきました。

f:id:khk2101:20200718090945j:plain

現在、伊豆箱根鉄道大雄山線には旅客車としてはこの5000系だけが走っています。第1編成(クモハ5001-モハ5002-クハ5501)だけは鋼製、この第2編成(クモハ5003-モハ5004-クハ5502)以降は軽量ステンレス製となっています。昭和後半〜平成にかけて東急車両で製造されているので、車体構造は国鉄ステンレス車に似ていますね。ちなみに運転台は京急800形にそっくりです。車体以外は同社駿豆線の3000系と共通で足回りはいかにも西武系という堅実な作りです。ブレーキは電気指令になっているものの、既にVVVF車が製造されていた時代に珍しく古風な抵抗制御を採用しています。台車も西武系標準のFS372、モーターは国鉄MT54型と同型です。最終編成は1996年(平成8年)なので、恐らく鉄道線では日本で最後に新造された抵抗制御車じゃないかと思います。

 

まず実車の山側を小田原駅東海道線ホームから観察してみました。

f:id:khk2101:20200718091725j:plain

大雄山寄り先頭車のクモハ5003号です。昭和61年製ですので、JR軽量ステンレス車の他、小田急1000形横浜市営2000系とほぼ同時期に製造されていますね。特に横浜市営2000系と車体もそっくりです。もしかしたら同じ製造会社なので1年前に登場した横浜市営2000系の車体の設計を流用しているのかも知れませんね。顔は駿豆線の3000系に似ていますが、裾絞りが無いので若干印象が異なります。足回りを見ると西武系のシンボル・西武101系から脈々と受け継がれているFS372形台車が使用されています。電気的な構造でJR的な言い方をすればM'cに当たるので、制御器は無く補助電源のSIV(静止形インバータ)があります。屋根上はJRのAU75G形冷房装置とそっくりなもの(型番不明・恐らく同じもの)が装備されています。コレも西武2000系などと同じですね。

f:id:khk2101:20200718092725j:plain

次に中間電動車のモハ5004号の観察です。特徴的なのは床下に消火器がぶら下がっている事ですね。普通は車内にありそうなものなんですが、緑町の急カーブで干渉してしまうのか、なぜか床下に装備されています。でもコレ、車内で火災が発生した時にはどうするんでしょうか?

機器は日本の電車では定番の配置である、山側に主制御器・遮断器・ヒューズなどが装備されています。屋根を見ると抵抗制御回生ブレーキなんか使わないのに2丁パンタで、国鉄PS16同等品と思われます。箱型ベンチレーターと冷房装置は同時代のJR205/211系とほぼ同じですね。

f:id:khk2101:20200718093628j:plain

小田原方のクハ5502号です。無線アンテナが西武してますなぁ。台車はやはりFS072です。ハンドスコッチが黄色ではなく赤で塗られているのが特徴ですが、コレは模型化すると台車と干渉する位置ですので再現するのは難しそうですね。

 

次に海側の観察。大雄山駅で行いました。

f:id:khk2101:20200718225427j:plain

今度の観察対象は第3編成(クハ5503-モハ5006-クモハ5005)です。クハ5503号を観察してみると車体のラッピング以外構造はほぼ同じなのですが、ライトの台座があるということが分かりました。というか、他の編成も観察してみるとステンレス車では第2編成だけライト台座が無いんですね。Wikipediaにも無い情報もあるので百聞は一見に如かず、やっぱり実地調査は大事だなぁ。

こちら側からみてもクハは機器が少ないですね。無記名の箱が色々あるので詳細は不明ですが、恐らくATS関連・ブレーキ制御器の部類でしょうね。

f:id:khk2101:20200718230010j:plain

次に中間電動車モハ5006号です。海側から見ると抵抗制御車の特徴である主抵抗器がドーンと見受けられます。ほぼ抵抗器ですね。割と近代的な車体に似つかないアンバランスが面白いですね。屋根の配管なども観察したいのですが、ホームからでは無理そうです。

f:id:khk2101:20200718230451j:plain

最後にクモハ5005号です。補助電源装置のSIVがよく見えますね。京急1500形に搭載されている東洋電気製造製SVH-85-461A-Mに酷似しています。コンプレッサーは各社で一般的なHB2000が搭載されていました。それにしても抵抗制御なのにSIVや遅れ込め制御付き電気指令式ブレーキなんて構造的にはかなり面白い電車です。

 

やっぱり気になるのは屋根の配管です。乗車中に屋根が観察できるような跨線橋を探していたのですが人が歩いて渡れる跨線橋はほとんど無くほぼ踏切、あったのは和田河原駅付近の1箇所だけでした。地方私鉄は単独立体化事業もあまり無いですからねぇ。という事で、近そうだったので歩いて大雄山駅から2駅戻って和田河原駅付近の跨線橋へ行ってみました。

f:id:khk2101:20200718232045j:plain

思った通りよく見えますねぇ。あくまでも観察なので金網があっても問題ありません。撮影したのは第6編成(クハ5506-モハ5012-クモハ5011)です。まずはクハ5506号。この編成からスカート付きで行先表示がLEDになりました。パンタも下枠交差形になったのですが、それ以外の基本構造は変わっていません。軽量ステンレス車なのですが、屋根にビードがなくツルツル、凹凸がありません。ベンチレーターも海側に若干シフトして取り付けられています。このような微妙な造作は実際に見てみないと分からないですからね。

f:id:khk2101:20200718232529j:plain

次にモハ5012号。屋根の配管を観察してみます。冷房装置はまるっきりAU75Gですね。相模線205系とほぼ同型が載っています。ランボードは脚で浮かせた構造になっていて、その下を高圧線が管路の中に通してあります。ベンチレーターは山側にシフトされているので、恐らくクハの設計はクモハを逆に向けて動力関係機器を外した構造になっているんじゃ無いかと思います。避雷器やヒューズボックスなど様々な機器が取り付けられていますが、割と標準的な機器なので模型化しやすそうです。

f:id:khk2101:20200718232952j:plain

最後にクモハ5011号。余計なものは何も無いスッキリとした屋上です。ベンチレーターが山側にシフトされていますので、前述のクハの構造はクモハの逆向きであることが推測されますね。

さて模型化の検討ですが、既にベースになりそうな何となく構造が似ていると思われたJR205系キットを購入してあります。

f:id:khk2101:20200718233703j:plain

実車を観察した結果、似ているようで全然似ていないという事が判明しました。特にビードの本数や窓のサイズなど、結構加工に苦労しそうな箇所が多いなぁ、と思った次第です。でもハードルが高ければ高いほどチャレンジしたくなるのは事実で、コレからどう調理して行こうか楽しみでもあります。

いやぁ、実車の観察は本当に楽しいですねぇ。この伊豆箱根鉄道大雄山線は7編成しか無いのですが、それぞれ個性があって面白いです。模型化抜きでも楽しい観察でした。